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つぶや記 104
  愛染かつら

   田中絹代ぶんか館ミニホールでの2月勉強会で、『愛染かつら』を取り上げました。田中絹代主演のこの映画は川口松太郎原作で、以後の映画に多くの示唆、影響をあたえました。
   まず「すれ違いメロドラマ」の典型になったことです。戦後には菊田一夫原作、岸恵子主演の『君の名は』がその代表作ですが、これは1949年のアメリカ映画『哀愁』の模倣で、舞台となる数寄屋橋は、『哀愁』の原題「ウォータールー橋」をもじった翻案映画です。
   それにくらべて『愛染かつら』は、戦前の1938年(昭和13年)ですから「すれ違いメロドラマ」の元祖の一つといってもよいものです。
   『愛染かつら』は、主題歌で一世を風靡しました。この面でも新時代を画した記念すべき作品でした。勉強会では石川秀さんがSPレコードを再生して、主題歌の解説があり、流行歌の奥深さに感銘しました。
   そしてわたくしが「すれ違いメロドラマ」における「偶然」ということで、少しばかり考察をこころみました。あまりにも都合のよい再会、そのすれ違い、常識ではあり得ない偶然の出会い、執拗なすれ違いが、物語をおもしろくするのですが、その「偶然」について、このごろ「必然」の見方が持ち出され、私たちを煙に巻いています。そんな切り口からメロドラマを鑑賞するのも一興とばかり、このたびは偶然ということを話題にしてみました。よくは分かりませんが、ユングの哲学がいう「共時性」、また「易」やフロイトの深層心理などもからみ、『愛染かつら』のお勉強も複雑怪奇かつ愉しいことであります。   
                                                                             (古川 薫)

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