名誉館長のつぶや記

名誉館長のつぶや記238 どうしたもんじゃろのう

つぶや記 238
  どうしたもんじゃろのう

   NHKテレビ朝ドラ『とと姉ちゃん』のヒロインが、時々溜め息まじりにもらす「どうしたもんじゃろのう」という日常語的方言が、妙にわたくしの気持ちをくすぐることに先日来気づいています。これは今年の流行語になるのではあるまいかと思ったりもしています。
   「さて、どうしたもんじゃろのう」とは、いま世界じゅうの人の思考回路を駆け巡っている言葉と言ってよいかもしれません。
  憲法改正、基地問題、民族紛争、環境問題、戦争、テロリズム、・・・・・・「どうしたもんじゃろのう」まさに途方に暮れた悩みの声を満載して、宇宙船地球号は走りつづけています。
   「世界病むと聴きつつ林檎裸となる」
  世界は病んでいると、だれかが慨嘆するのを聴きながら林檎の皮を剥いている。林檎に地球を連想させた名句です。
   中村草田男がこの句を詠んだのは、1世紀近い前のころですが、21世紀の今となっても世界の情況は変わらないどころか、さらに病は進行しています。
   しかしドラマの主人公が「どうしたもんじゃろのう」と考え込み、途方に暮れているばかりではなく、解決の道を切り拓いて行く。朝ドラらしい明るいかたちの「どうしたもんじゃろのう」です。
   病める地球となると、簡単にはいきませんが、「どうしたもんじゃろのう」と、叡智をしぼり出す人間の姿を描いてみせるのが『とと姉ちゃん』の狙いとみました。
                                                                               (古川 薫)