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 つぶや記 103
 三丁目の夕日

 アメリカからの帰り、機内映画で『男はつらいよ』を観て泣いたという話を、よく聞いたものでした。ずいぶんむかしのことです。
 この映画の第1作が喝采をあびたのは、昭和44年(1969)でした。アポロ月面着陸、ヴェトナム戦争、国内では全共闘が荒れる学園紛争と、卍ともえの様相でしたが、日本経済はようやく高度成長期に入り「昭和元禄」という言葉も飛び出しました。やがて1980年後半から90年代にかけるバブル経済時代への前奏曲が鳴り響くところです。貧しく、いくらかは目先のにぶい善人がたくさんいたころの日本への郷愁だったのかもしれません。
 このごろ『三丁目の夕日』という映画が、鳴り物入りの宣伝で観客を集めています。先日、わたくしは上京しておりましたが、新聞などは地方より東京のほうが、派手だったように思います。物語の背景にあつかわれている東京タワーの地元ということからか、いや人間が無機質になって行くのは、大都会で顕著なので、その面のよき時代への郷愁をあてこんでいるのかもしれないなどと想像をめぐらしました。
 『三丁目の夕日』 に登場するのは、寅さん同様貧しい人たちです。日本人の多くが貧しくて善人だった時代です。主人公は寅さんほどに無知で、わざとらしい諧謔をふりまくのでは
なく、むしろ教養もあり、それでいて底抜けにお人よしで、貧しい生活を懸命に生きているので、喜劇に終わらないリアリティーがあります。平成の氷河時代にふさわしい映画とは、このようなものでしょうか。前作を観ているので、いずれわたくしめも劇場に泣きに行こうかと考えています。     (古川 薫)

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