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 つぶや記 91
 2歩前進は文明

 中国を旅していて、面白い言葉に出会いました。いわく「2歩前進は文明」という教えですから、これは日本人男性諸君にも伝えなければと思いました。ほかでもありません北京で使った男性トイレの話です。
 用を足していると、目の前の壁に「1歩前進向井前 2歩前進―文明」と書いたプレートが貼り付けてあるのでした。男性便器の床が濡れているのは、東西いずれの国でも同様で、わたくしの経験では、紳士の国イギリスでも、やはり公衆トイレの男性便器の床がタレコボシで、濡れているのを見た記憶があります。
 中国ではそれがひどいと言ってみたものの、日本でも負けてはいません。映画館のトイレは急いでいるせいかビショビショで、それが少ないのを物色して用を済ませるというていたらくです。一応は分かっているのです。もっと体を前に進めればよいのに、衣服が便器に触れるのを嫌い、1歩前進で済ませてしまう。便器の床を濡らしているのは、非文明のなげかわしい象徴として、「2歩前進―文明」の呼びかけとなったのでしょう。
 いきなり明治時代の古い話になりますが、児玉源太郎が陸軍大尉になり、大阪鎮台の副官として赴任してきたときのこと。将校集会所の便所が薄暗いせいか、床がよごれるので「前に進んでやれ」と張り紙がしてある。それを見た児玉は烈火のごとく怒り、「いやしくも兵隊の範たるべき将校の不名誉ではないか」とその張り紙の撤去を命じたという話が残っています。
 百年後の今も男性トイレでは相変わらず非文明の状況がつづいているわけで、自戒もふくめ以上中国旅行の報告といたします。(古川 薫)

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