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つぶや記 89
   痛みとの戦い

   先日、宇部市の全日空ホテルで「中部日本整形外科・災害外科学会学術集会(会長山口大学医学部田口敏彦教授)があり、名古屋以西の医学者、開業医千数百人が集まりました。わたくしは文化講演として『面白き事もなき世を面白くー高杉晋作のメッセージ』と題する話をさせていただきました。
   この学会のテーマは「運動器の痛みを識る」となっています。高杉晋作は幼少のころから詩人として立つ志をいだいていました。それは果たされませんでしたが、少年時代から死ぬまでの13年間に、約400篇のすぐれた漢詩を遺しています。
   最晩年の詩の一節に「恨むらくは、我、少年の日、兵を学んで詩を学ばず」と、戦闘者として生涯をとげることを嘆いています。『面白き事もなき世を面白く』という彼の辞世は、常に不幸感に満たされるこの世への恨み、そしてそんな世を精一杯面白く命を燃焼したと、後世に語りかけるダイイング・メッセージであったのです。「恨む」という心の痛みを訴えた晋作の話は、ちょっぴり学会の趣旨に沿ったつもりですが。――― 
   医学でいう痛みとは、むろん肉体的な痛苦ですが、精神性の痛みもふくまれるわけで、人間はいつも何らかの痛みに襲われている生き物です。
   IT技術の発達で、痛みという実に主観的、抽象的な病理も計測できる日が近いそうです。「恋の悩み」もそのうち病院で治療できる日がくるでしょうか。それともやはり「お医者さまでも草津の湯でも」ですか。こんどの学会で大阪大学の池田光穂博士の『痛みの比較文化論』という特別講演があったことを迂闊ながらあとで知りました。紀要ができたら、素人の好奇心で一読したいと思っています。   
                                                                           (古川 薫)

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