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 つぶや記68
 
金子みすゞ

 金子みすゞの正確な生年月日を知りたいと思って、広辞苑第6版を引いてみましたが、金子光晴は出ているが、みすゞは見当たりません。
 ついでですが、大詩人金子光晴が下関にきたのは大正時代初頭だったと思われます。大正15年12月に新潮社から出た詩集『水の流浪』に、「関門海峡」という詩が収録されています。
 「関門は職を失ひ、妻子をおいて、こころは無、ふところも寒い雨の朝、連絡船でわたるには、なんとそっくりふさわしいことか」ではじまるこの詩は、ほかの文人が下関を詠んだ作品にくらべて、あまり明るいものではありませんが、旅人が抱いたであろう下関の旅情を言いあてているようで、わたくしたちの心をなごませてくれます。
 さきごろからよく言われるようになった「癒し」ということばを、甘ったれた根性に見えて、わたくしは必ずしも好きになれませんが、こんどの東日本大震災にかぎって、「癒し」の効用といったものの切実な思いをこめた感慨を味わいました。被災者たちに対する物質的な支援はもちろんですが、心に贈る「癒し」こそが最大の義捐であるでしょう。そんなとき金子みすゞの童謡詩は、まるでこのときのために、みすゞが詠い遺してくれたのだとの感があります。
 そんな金子みすゞが、広辞苑に載っていないのは不思議な気がします。念のため『山口県百科事典』(大和書房)をあたってみましたが、1982年(昭和57)発行のこの書物にはまだ記載がありません。東日本大震災が発生した当初から、テレビ・コマーシャルでみすゞの詩が紹介されてから、あらためての「みすゞブーム」となりましたので、ひょっとすれば広辞苑第7版には登場することになるかもしれません。この項つづきます。
                                                                       (古川 薫)

 

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