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  つぶや記 63
 窮鳥懐に入れば

 先日、 田中絹代ぶんか館で田中絹代監督の映画『流転の王妃』特別展を催しました。監督じしんの生まれ故郷下関に直接関わりがあるのは、この作品だけです。しかし残念ながら、この映画に下関は登場しません。
 ヒロイン愛新覚羅浩さんの祖母に当たる人が、下関出身ですから、ストーリイの前史にあたる部分はまったく触れられてないのは、残念というより不満でありました。愛新覚羅溥傑氏の著書に掲げられた系図からも、恩地登美女の名は消されています。商人の子だからでしょう。わたくしはこの映画そのものの出来ぐあいも不満で、絹代作品として並べることも心苦しいとまで考えています。原作者の浩さんが、撮影現場に付っきりで口出しされるので絹代さんも大変だったと聞き、やはりそうだったのかと納得せざるを得ませんでした。 
 浩さんの祖父にあたる公家の中山忠光(明治天皇の叔父)は、天誅組の乱の大将として幕府のお尋ね者となり、逃げて長州藩を頼ってきました。藩主毛利元周ははじめ大切に忠光を保護しましたが、幕府の追及が厳しくなると、もてあまして暗殺したのです。「窮鳥懐(ふところ)に入れば猟師も殺さず」といいますが、保身のため、ついに殺されてしまうのも浮世の悲しさ。長州の大楽源太郎も保護者の久留米藩に暗殺されました。
 最近、ウサマ・ビンラディン殺害のニュースが飛び交っていますが、パキスタン政府は彼の隠れ家を黙認していたのではないか、パキスタンの軍部が殺害に関わっていたのではないかという説も出ています。ともなればこれも「窮鳥懐に入れば」の現代史悲劇ということですか。大統領の口から「殺害した」というおぞましい言葉が出るなど、まさに乱世の様相を痛感するこんにちです。   (古川 薫)

 

 

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