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  つぶや記 58
 4月は残酷な月だ

 4月になると、イギリスのノーベル賞詩人、評論家、劇作家、T・S・エリオットの長詩『荒地』の書き出しを思い出します。
 ーーー「4月は残酷な月だ」
 いや3月こそが残酷な月でした。そして4月にも残酷はつづいています。
 今月25日に「筑前琵琶上原まり演奏会」が下関市民会館で催されます。演目は拙著『物語英雄叙事詩・三国志』と『平家物語』、前者は本邦初演です。
 昨年からの企画ですが、3月の東日本大震災に遭遇して、中止しようかという意見も出ました。すでにポスターも出来上がり、キャンペーンもはじめていましたので悩みぬいた末に、決行ということになりました。内容からいってもお祭り騒ぎといったものではなく、静謐重厚な琵琶演奏です。
 第一部の三国志「赤壁の賦」は、蘇東坡が古戦場を訪れ、楊子江上の笛の音にむせびながら、悲愁の思いを述べる叙情の場面であり、また稀代の名伯楽・諸葛孔明が五丈原で最期をむかえる悲壮な英雄譚を音楽の世界に再現します。
 第二部『平家物語』は、物語冒頭の「祇園精舎」および「壇ノ浦」の悲壮な平家の終焉を弾き語る上原まりさんの美声が、海峡の町に響きわたります。はからずも大震災の犠牲者を悼み、「遺響を悲風に託す」鎮魂のうたげともなれば、主催関係者にとって望外のよろこびというべきでしょう。
 T・S・エリオットの「荒地」は、第一次大戦後におけるヨーロッパの疲れた精神風土のことで、それからの脱出の可能性を暗示するものとされます。
 震災後の荒地からの脱出を祈る弦の響きに、しばしの間、耳をかたむけることといたしましょう。なお、前日の3月24日午後2時から、上原さんの奉納演奏(平家物語)が、赤間神宮神殿でおこなわれます。     (古川 薫)

 

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