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つぶや記 52

江波杏子さんのこと

 

第65回毎日映画コンクールの田中絹代賞が江波杏子さんに決まり、先日川崎市での授賞式に行ってきました。上背のある江波さんの和服姿に、例の『女賭博師』で脚光をあびた「昇り龍のお銀」を一瞬連想しましたが、そのイメージからは早くに脱皮されたはずでした。和服の似合う人です。

この日、各賞受賞者の受賞のあいさつは、どれも、照れ隠しめいたスピーチに終始し、オスカーの授賞式でのウイットにとんだものではありませんでした。やはり日本人は下手ですね。しかしその中で江波さんのあいさつは堂々とした、まじめな謝辞でしたし、何よりも内容に味がありました。

16歳で大映ニュー・フェースとして入社、その研究生だったころのある日、女学校の制服姿で連れて行かれたところが学習院で、カメラのそばにいたのが田中絹代監督です。昭和35年(1960)、4本目の監督作品、下関とも関係のある『流転の王妃』(大映)に、はからずも江波さんは出演していたのでした。先日ぶんか館で上映した同作品を観ると、たしかに江波さんが生徒の中にいました。彫りの深い(和製オードリー・ヘプバーンといわれた)顔はべつに探すまでもありませんでした。

田中絹代監督の優しく丁寧な指示ぶりの思い出話もあり、映画界に入って、初めての出演が絹代監督の作品だった自分が、その先生の名を冠した賞をいただくことに深い感慨がある云々・・・・など、聞かせる内容のスピーチでした。
パーティーの席上、石坂洋二郎原作『青い山脈』の姉妹篇『若い人』に江波恵子という人物が登場するが、関係がありますかと尋ねると、「母のことかもしれません」とのことでした。この話は別の機会にします。とにかくいい人が受賞されました。いずれ下関にお呼びしたいものです。
                                                                            (古川 薫

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