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  つぶや記  48
  君の名は

   2月11日からはじまる下関海峡映画祭で、昭和28年(1953)製作の松竹映画『君の名は』が上映されます。前年放送された菊田一夫作連続ラジオ・ドラマの映画化で、テレビもなく、ラジオと映画が”娯楽の王座”を占めているころ、同じ菊田一夫のNHK放送劇『鐘が鳴る丘』は、終戦直後の昭和22年からはじまりました。街のあちこちにまだ戦災の傷跡をのこしている時期、娯楽番組も戦争孤児救済といったテーマが背景にひそんでいました。
 やがて、朝鮮戦争による特需景気、サンフランシスコ講和条約を経て、急速に変化した日本の戦後社会に生まれた連続ラジオ番組が『君の名は』です。これは、メロ・ドラマでした。東京大空襲の時、偶然出会った若い男女、後宮春樹(佐田啓二)と氏家真知子(岸恵子)が、半年後の再会を約して別れるが、なかなか会えない擦れ違いのストーリー。第2次世界大戦下のロンドン空襲を舞台にしたアメリカ映画
『哀愁』を真似たもので、場所を数寄屋橋に置き換えていますが、とにかく空襲というおぞましい記憶の中に飛び込んできた恋愛劇が、強烈に人々の心をとらえたのです。
 ショールを頭から首に巻きつける「真知子巻き」スタイルも流行、北海道の摩周湖や九州は雲仙など名勝を駆けめぐり、「忘却とは忘れ去ることなり」の哀切なナレとともに始まる通俗ドラマに婦人層が熱狂、木曜日の女風呂がカラになると騒がれました。街の銭湯が賑わう当時の生活ぶりもなつかしい戦後史の一風景です。あれから60年後、先年の「冬ソナ」にご婦人方がメロメロになる様子を連想、歴史は繰り返すの感ありです。『君の名は』を知らない団塊世代以後の人も、現代史研究の一環として鑑賞をお奨めします。                        (古川 薫)

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