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つぶや記 45
  海東諸国

   「壬戌秋七月既望」
   蘇東坡の『赤壁賦』の冒頭にある詩句です。「壬戌(じんじゅつ)の秋、7月の既望(きぼう)」と読みます。干支でいうミズノエイヌ、これが北宋の元豊5年(1082)で、7月の既望(キボウ)は、7月の満月の翌日16日となります。その日、蘇東坡が後漢の古戦場赤壁に遊び、名作『赤壁賦』を詠んだのでした。
ところで蘇東坡が生きていた時代の干支「辛卯」(しんう・カノトウ)は、北宋の政和元年(1111)、和暦では鳥羽天皇の天永2年にあたります。
   今、わたくしたちが生きている平成23年(2011)は、それから数えてちょうど900年目であり、干支でいうとわずか15回目の辛卯です。
さて、ことしの平成23年の辛卯から9回前の辛卯は、文明3年(1471)です。この年、隣の朝鮮国では申叔舟の日鮮交流地誌『海東諸国記』が刊行されています。
   ここでいう海東諸国とは、日本の本州・九州・壱岐・対馬・琉球のことです。この『海東諸国記』が当時、倭寇として恐れられた西日本の海賊のことに触れ、海賊は赤間関(下関)を境とする東西の海に分布していると書いています。
   新年にあたり、視野を拡大した千年暦をながめていたら、そんな記事に行き当たりました。それにしても、60年毎に還暦となる干支で数えれば、わたくしたちの命のはかなさというものを、ひしひしと感じ、まさに蘇東坡が詠んだように「わが生の須臾(しゅゆ)なるを哀しむ」のですが、同時に人間の命が悠久の宇宙暦の中に存在しているのを感じることもできます。以上、平成23年・辛卯・2011年の迎春随感であります。
                                                                                  (古川 薫)

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