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 つぶや記 25
 西赤関に大沢あり

 中原中也記念館の「河上徹太郎と中原中也 ー その詩と真実」展を観て、河上先生への思いあふれて際限なく、いくらかは自慢めく話になりそうですが、非難は覚悟の上で、最後にもうひとつ書き残しておきます。
 みじかい期間でしたが、わたくしの長州にかかわる伝記的歴史小説を気に入られて、そのたびに短評を添えた礼状をいただきました。調子に乗って久坂玄瑞を書いた『花冠の志士』(文藝春秋)の帯につける推薦文をお願してしまいました。快諾されて「拡大コピーを届けるように」との連絡が担当編集者にあり、急遽A3判用紙に活字を拡大したゲラができました。河上先生が亡くなられる前年のことです。衰えかけた体調を押しての作業だったことを、私は知りませんでした。
 約600枚の作品を、そのようにして読んだ上で、400字足らずの推薦文を書くというのは、単に誠実というだけでない、著述家としての厳しい姿勢にほかならなかったのです。先生の命を縮める一因ともなったのかもしれないと、今にして気づくというのも愚かの極みであります。推薦文は次のとおりです。
 「古川薫氏の史伝物はいつも愛読している。そこでは開明的志士桂小五郎でも、保守党の首魁椋梨藤太でも、ともにその心情の底に同じやうな愁ひ、共通する悲しみが流れている。それは作者自身の肌合ひでもあろうが、私には郷土の土の匂ひといった人間味を感じさせる。 (略)」   わたくしは河上先生から色紙をいただいています。それには「西赤関/在大沢」(西赤関に大沢あり)と墨痕あざやかに書いてあります。
 赤関とは下関のこと。「松陰先生がそう呼ばれていたのだよ。大沢とは君のことだ」とありがたい言葉を添えて下さいました。これは過褒にちがいありませんが、わたくしにたいする最大の激励として、秘蔵しております。           (古川 薫)

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