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つぶや記 272
  政治教育不必要の失敗

  高校在学中18歳になって選挙権を与えられ、何だか困っている表情の若者を投票所で見かけたという話し声を耳にしました。たまたま高校の校長さんに会いましたので、どうですかと訊ねてみました。
  「前々から政治教育の準備はしていたものの、まだ少年少女といった若者たちに政治とはなにかを、どう教えたらよいのか暗中模索です。そこにいきなりの衆院選です。正直あわてました」とのことでした。
  「だれを選べばよいのですか」と生徒から質問されて困惑した先生たちもいたことでしょう。
  さて、わたくし老人なりに思い当たることもあります。
  陸軍大学校を卒業した"将軍"たちが書いた本を、戦後しばらくして読んだのですが、それぞれが作戦の齟齬などを反省する論文であったりするのはあまり面白くありません。そのなかに一つ、これだけは将来に申し送るべき大事な発言だとうなずいたのが「陸大で政治教育をしなかったことが日本の進路を誤らせた」という一文でした。
  軍人が政治に口出してはならぬという訓戒は、1878年(明治11年)に出たもので山県有明の発案だったといわれています。紙数がないので詳しくは説明できませんが、陸軍の内紛「竹橋事件」が原因です。要するに軍隊の中立を厳しく訓戒したもので、5年後に出た『陸海軍人に賜はる勅諭』(通称「軍人勅諭」)の先駆となりました。
  5つにわけた徳目のうち最初の「忠節」の項に「軍人は世論に惑わず、政治に拘わらず」と、軍人の政治への不関与を命じています。このため軍人には選挙権も与えられませんでした。
  政治への不関与を金科玉条の戒めとしながら、実際にはその逆で、軍人が総理大臣にまでなって軍国の道をまっしぐらに暴走し国を誤らせたのです。陸大を卒業した"将軍"たちが書いた本の中には「政治に関わる学科はなく、教育課程から政治学はまったく抜け落ちていた。それが国を誤らせた原因だ。日本軍の首脳は政治オンチだったのだ」と反省しているのでした。
  ついでに言っておくなら、例えば防衛大学校など政治史をふくめた政治学はどのようなカリキュラムになっているのか。卒業生の多くは、いずれ国軍の首脳になっていく人たちです。純正な政治哲学を履めた聡明な軍人になってください。
                                                                               (古川 薫)

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