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つぶや記207
今は楽園の海

  5月27日、那覇市で沖縄戦での海軍戦没者慰霊祭があり、わたくしが書きつつある特攻隊3次龍虎隊の人々もこれにふくまれますので列席しました。
  5月27日は日露戦争の日本海海戦にちなむ旧海軍記念日にあたります。小学生のころ、Z旗をあしらったリボンを胸につけ、校庭に整列して「東郷さん、東郷さん」の歌を合唱したことを覚えています。
  それは軍国主義華やかなころの戦勝謳歌の記憶ですが、いまは敗戦悲史を記念する海軍司令部壕跡の公園で平和の祈りを戦没者に捧げる日となっています。
  翌日、海上自衛隊那覇航空基地のP3C(対潜哨戒機)の体験搭乗に参加、四十分間にわたり慶良間(けらま)諸島海域の上空を遊歩する機会にめぐまれました。海上約200メートルを低空飛行する機上からみる慶良間湾には、波静かな群青の海に散らばる小島が、いつか見た宮城県の松島湾や、それにそっくりのパラオ諸島の礁湖の風景を連想させました。
  慶良間諸島は1945年4月、日本本土占領をめざしてまず沖縄攻略にかかる米軍が上陸したところで、激烈な攻防戦が展開された海域でした。しかも島民数百人が自決した痛ましい戦争の傷跡をとどめる海でもあります。
  集結した米駆逐艦隊を攻撃目標に、宮古島を出撃した7機の特攻赤トンボが散華したこの海の透き通る砂底を見下ろす悲しいまでに美しい光景を網膜に収めながら、わたくしは第4次龍虎隊の山口忠平(甲飛12期生)が手記に書いていた大木敦夫の詩『海原にありて歌へる』の一節「海ばらのはるけき果てに/今や、はた何をか言はん・・・・・・」を、思わず口ずさんでいました。
  白砂の環を描く慶良間の小島の群れは、リゾート地となってシュノーケリング・ツアー、ダイヴィング・ツアーに全国から集まってくる若者たちでにぎわっています。その光景は龍虎隊が出撃した宮古島にも見られます。そんな平和を願って戦い、短い青春を終えたあの若者たち、そして個人的には何の恨みもなく死闘して果てた両軍兵士たちも微笑みながら楽園の様子を、いまわたくしがいる同じ上空からながめているにちがいない。戦後70年、無心に翔ぶアメリカ製P3C機中で去来する思いがありました。
                                                                                  (古川 薫)

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