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つぶや記 159
新しい戦死者

 数年前オーストラリアに行きましたが、たしかキャンベラでのことです。案内されたその建物の正式な名称は忘れてしまいましたが、「国防軍」戦死者の慰霊・顕彰を目的とするメモリアル・ホールでした。200号ばかりの大きな油絵数点が戦死者の慰霊として寄贈されたので、それを見せるというのです。
「第二次大戦で戦死した人々ですか」と、ガイドに訊ねると、そうじゃないと言う。太平洋戦争が終わってから60年、戦死者などまったく無縁の歳月をすごしてきた日本人としては怪訝な顔で、「オーストラリアはその後どこかと戦争しましたか」などと頓珍漢な質問をするしかありません。
「国連PKOでの戦死ですよ」「・・・・・・!」
 絶句。日本の自衛隊もPKOに出ているけれど、道路敷設や補給などに活動が限定されたので戦死者は出ていない。憲法第九条のおかげです。
 昭和19年に作られた田中絹代主演の映画『陸軍』で、絹代扮する母親が前線に向かう息子の身を案じて愁嘆場を演じ、また親戚の家の息子が前線送りを逃れたと聞いて「よかった、よかった」と大声あげて背中をたたく。軍のタブーを冒し、軍国宣伝映画をひとひねりして、反戦映画に仕立てなおした木下惠介監督の勇気ある知性が、昭和映画史に輝いていますが、それを遠い過去の話とばかり思ってはいられないことになりそうです。憲法改正、集団的自衛権解禁をめざす与党が絶対多数を獲得、衆参両院のネジレ解消を絶叫する選挙が終わりました。
 オーストラリアは、「世界の国際平和協力活動」に最も熱心な国家として知られています。アメリカが海外派兵に消極的になったのは、国民がそれを嫌い、推進すれば政権が保たれないことを政治家が気づいたからでしょう。
 特定非営利活動法人・国際変動研究所の調査研究報告書『平和構築と国益--豪日協力モデルによる挑戦』によれば、国連PKOは極度に参加人員不足の状態にあり、豪州は日本との提携を強く望んでいるそうです。クワバラクワバラ。
                                      (古川 薫)

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