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つぶや記 113
  辞典に拾う

   夏目漱石の日記を読んでいたら、「今日、辞書の中でこんな言葉を見つけた」という意味のことが記されていました。以来、わたくしも知識欲旺盛な漱石先生の「顰みに倣い」時に辞典類をめくることにしています。
   こないだ『日本人女性人名辞典』で、長州出身の青木周蔵(松方内閣の外務大臣)の妻となったドイツ貴族エリザベートのことを調べ、それから各項目に目が移っていくうちに、前回お話しした幕末の漢詩人・広瀬旭荘の妻のことが出てきたので、夜の更けるのもわすれて読みふけりました。
   しとやかな美人でしたが、旭荘は暴力をふるう癖があったので、結婚のとき妻に契約書をいれました。もしそれを犯したときは、誓約書を親戚一同に見せることも約束しました。
   やはり旭荘は家庭内暴力をふるいましたが、妻は誓約書を親戚にみせることもせず忍従して、作詩、著作に打ち込む夫を陰でささえ、ついに不治の病にかかりました。旭荘が妻の枕元で号泣すると、「男ハ女房ノ前デ泣クモノデハアリマセン」とたしなめて息を引取ったということです。
   もう少し詳しく、妻の名も知りたいとその辞典を繰りましたが、広瀬姓の項目になく、見つかりません。1000ページもある辞書なので、この稿に間に合いませんでした。こうなると辞典は不便ですな。そのうち、ついでのとき見つかったら報告します。
                                                                             (古川 薫)

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