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つぶや記 107
  ニベもない

   「ニベ」という魚がいます。ニベ科の硬骨魚で、南日本、中国の近海に産し、全長90センチ、尾ひれに切れ込みがあり、背は灰青色、腹部は淡色。ウキブクロを振動させて鳴く。そのウキブクロから膠を作る。大要そのように辞典類が説明しています。
   さらに広辞苑をひくと「にべにかわ」という言葉が出てきます。これは「粘着力の強いところから、転じて、他人に親密感を与えること。多くは否定表現で用いる」とあります。ニベもなく断る、というふうに使います。
   先日、ある新聞記事を読んで、その否定表現を、満腔の失望感をもって味わいました。南極海から帰国中の調査捕鯨団のうち、母船・日新丸が下関港に寄港しないことを運航会社から下関市に通知してきたというのです。捕鯨母船・日新丸の下関寄港は、わたくしが知るかぎりでもこの半世紀、下関港の歴史的風物詩でした。戦前・戦後の食糧危機をしのいでくれた南鯨(南氷捕鯨の略称は下関でうまれました)の国内基地としての下関港は、恩恵を受けたばかりでなく、南鯨への貢献度も高く評価されてきたはずです。
   反捕鯨の風圧を押して出港する調査捕鯨団にたいする市民挙げての声援も全国に例のない熱烈なものでした。市のロゴ・マークをクジラと制定したのは、つい先日のことです。「下関で陸揚げした場合、流コストがかかる」という理由で突然の寄港断念とは、まったくニベもない通告です。関係者は泣き寝入りしないでください。
                                                                         (古川 薫)

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