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つぶや記 106
糞リアリズム

 わたくしが最初中国に行ったのは、文化大革命が収束したころの1972年でした。京劇が観られるという期待が、みごとにはずれたのを憶えています。
 やっていたのは「現代京劇」で、鉄道員が主人公の『紅灯記』が主なだしものでした。例の五人組のひとり、悪名高き江青女子(毛沢東夫人)の指導で演劇改革が進められていたのです。江青は1930年代上海の新劇界で活躍、39年に毛沢東と結婚してから権力の座につき、得意の演劇分野で腕をふるいました。
「酒に酔った楊貴妃がなよなよと媚びを売るような京劇は革命下の人民になじまない」というので、旧京劇を上演禁止にしてしまいました。当時、江青が強権をふるい現代京劇に口出しした有名な話は、『紅灯記』のコスチュームについてでした。主人公の鉄道員がぼろぼろの服を着ているのを見て、彼女が「それは"糞リアリズムだ"」と、演出を叱りつけ、それからは小ざっぱりした作業服を着るようになったそうです。
 "糞リアリズム"というのは、たしか昭和初年ごろ日本の文学界で使われ、徹底した写実主義を貶した言葉であったはずです。わたくしには彼女が吐いた"糞リアリズム"批判が、美と真に関わる問題として面白く、そしていくらかは共感するところがありました。
 実はNHKの大河ドラマ『平清盛』について、兵庫県の知事さんだかが「汚い」と批評したことがニュースになりました。反発したのかどうかわかりませんが、いぜんとして清盛のコスチュームは汚い。ジャンチン女子の京劇改革の話を思い出しながら、『平清盛』を観ています。他意ありません。
                                     (古川 薫)

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