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  つぶや記 80
 「震災後」

 東日本大震災に関する写真雑誌などの特集保存版があれこれ出ているので、2冊ばかり買わせてもらいました。孫たち、またはその後に生まれた者たちが、それらのページを凝視している場面を想像しながら蔵書に加えました。
 わたくしは関東大震災の翌々年に生まれましたので、家にはまだ大震災の大型写真画報があって、震災から10年後の少年のころ、それをながめた記憶があります。大人たちの会話に「震災後」といった言葉がしばしば混じっていたことも覚えています。幕末、ペリー来航以後「葵丑(きちゅう)以来」が合言葉になったように、東日本大震災はこれから10年後、いやもっと長い歳月にわたり、時の命題として生き続けるでしょう。
 関東大震災は、田中絹代を映画の世界に引き出す契機となりましたが、日本の文化状況にひとつのエポックをもたらしたことは、すでに指摘された通りです。下関には東京からやってきた吉田常夏という文化人が、「燭台」という雑誌を発行、若いころの火野葦平が寄稿し、金子みすゞも顔をのぞけて創作意欲をそそられたひとときです。
 大きな異変のあとには、大なり小なり社会変革が見られますが、その最大の事件はやはり戦争でしょう。第一次世界大戦の次には、第二次世界大戦にも現象しました。趣はやや違って「アプレゲール」とはもっぱら若者の放恣で頽廃的な傾向をさしましたが、それどころでない戦後の一大社会変革とむきあうことになりました。
 ところで「レジーム・シフト」という恐ろしい言葉があるのを最近知りました。大気・海洋・海洋生態系からなる地球の動態の基本構造が数十年間隔で転換するという学説です。昨今の異常気象を見ていると今がその転換期ではないのか。それが「震災後」とどう重なるのか。その様相が現れるのは、わたくしどもアナログ世代が地を払ってからのことになるのでしょうが、はてどんな世の中になるのか。詮ないことですが興味はあります。   (古川 薫)

 

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