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  つぶや記 61
  津波と伊達騒

 NHKのBSで昭和45年の大河ドラマ『樅の木は残った』を再放送していたので、面白く鑑賞させてもらいました。これは仙台藩の伊達騒動を描いた作品ですから、こんどの東日本大震災の中心地ともなった仙台地方にちなんだ企画と思われます。(NHKのその意図があったというのはわたくしの独断です)
 終わったころ別のデジタル放送の画面に、クリント・イーストウッド監督(俳優)の東日本大震災にたいするお見舞いの言葉が出ましたので、ほんの少しおどろきました。わたくしの見聞の狭さかもしれませんが、アメリカの映画監督個人のお見舞いがめずらしいと感じたからです。しかしすぐにあることを連想しました。あることとは、イーストウッド監督が巨額の制作費をかけ、早くもアカデミー賞候補の呼び声が高い最新作のことです。いよいよ全世界で公開というとき、東日本大震災の突発で、しかもこれが津波を主題とする映画なのです。不幸な偶然の一致でした。当然、自粛ということになったようですが、永遠にお蔵入りというわけにもいかないでしょう。巨額の投資にたいする利子もまた膨大な数字にのぼるショー・ビジネスのきびしい事情もあります。
 イーストウッド監督の大震災見舞いの広告が出たところをみると、公開近しの予感はありますが、仙台の被災にちなんで、『樅の木は残った』を再放送することの意味と同列には考えられません。へたをすると「奇貨おくべし」というふうにとられかねません。
 伊達騒動をあつかった史劇には、死をもって主家を救ったサムライ原田甲斐の生きざまのすがすがしさや、女人の秘めた恋の美しさもえがかれていて、人の心を癒す要素はあるといえます。イーストウッド監督の作品が、単なる娯楽でなく、悲惨な現実に対応する思想をいかに感動的に表現しているかによって、解釈は分かれるのですが、なかなか微妙な問題ですね。           (古川 薫)

 

 

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