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つぶや記 22
  シルバーベア

   べルリン国際映画祭で銀熊賞をもらった寺島しのぶさんが、テレビのーク番組に出演しておられるのを見ました。そして彼女が抱いていたが、シルバーベア(銀熊)なのでした。
そっくり同じものが、田中絹代ぶんか館に展示されているのは、ご存知のとおりです。日本人女優がこの賞をもらったのは、田中絹代いらい実に35年ぶりの快挙であります。ベルリン国際映画祭は、毎年ベルリンで開かれる国際映画祭です。
  ベネチア、カンヌの映画祭より歴史はやや新しく第1回は1951年
(昭和26年)でした。『十二人の怒れる男』(シドニー=ルメット監督)、『野いちご』(イングマール=ベルイマン監督)ほか時代の先端を切り拓く監督たちに金熊賞を与え、世界の注目を集めました。
日本映画は『生きる』(黒澤明監督)が銀熊賞を、『武士道残酷物語』(今井正監督)が金熊賞を受け、さらに『サンダカン八番娼館・望郷』
(熊井啓監督)で、田中絹代が銀熊賞(最優秀女優賞)を獲得したのです。 『ローマの休日』のヘプバーンを押しのけての受賞でした。このたび寺島さんの受賞は、他の女優のキャリアや演技力とくらべて、やや意外という感はぬぐえません。戦争という現代のシビアな課題に沿う内容が加勢したのでしょうか。「運」ということでしたら、絹代も強運の人でしたが、『サンダカン八番娼館・望郷』の受賞は、むろん運というものではありません。ところで寺島さんが抱いた可愛いシルバーベアは、純銀の艶を帯びた輝きを、みずみずしく放っていました。当館の同じトロフィは、少し錆びが浮き出て変色しています。その古びも得がたい歴史の光彩として、そのままにしておくのが自然というものでしょう。トロフィと共に写る病み疲れた絹代の写真取替えとは別次元の問題として、宿題としておきます。
                                                                           (古川 薫) 

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