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つぶや記 254
  クアラルンプール

   クアラルンプールというマレーシアの首都の地名を口の中でころがしていると、語呂が快く響きます。さきごろ北朝鮮政府高官の血筋にあたる人が暗殺される事件があり、連日のように新聞・テレビでお目にかかるので、このさい快いという言い方は適当ではありませんが、ふとした旅情を覚えました。
   わたくしがクアラルンプール(略称KL)に行ったのは1992年のことで、山口県とゆかりのあるイエズス会神父、フランシスコ・ザビエルの伝記を書いたとき取材で訪れたのです。
   クアラルンプールといえば、こんにちでは東南アジア有数の世界都市として知られていますが、わたくしが行ったころのKLは、ワニに似た小型の爬虫類が亜熱帯の陽光を浴びて飛び跳ねている泥川が市街の中央を流れる16世紀ポルトガル植民地の廃市みたいな町でした。
   ザビエルが日本での伝道をおわって出国、中国での布教を志し、インドのゴアからマラッカ(マレーシア)に渡ったのは1552年(日本天文21年)でした。現代人のわたくしとザビエルの旅程は、空と海の違いだけです。
   ゴア(ザビエルの墓があります)から空路KLに着く寸前、機中で見た空港周辺の夜景は素晴らしいものでした。ところが翌朝、ホテルの窓から外をのぞいてびっくりしました。夜景はネオン・サインで作った光の海にすぎない巨大な夜の飾りだったことに気付いて二度びっくりです。今思えばわたくしが機中から見た夜景が、以後四半世紀のあいだに現出した幻の巨大都市にあたる空間だったのです。
   そのとき見ることはできませんでしたが、クアラルンプール自慢の観光スポットは、ペトロナスツインタワーです。イスラム様式・88階・452メートルの2つの塔をスカイ・ブリッジで繋いだ世界一のマンモス・ツインタワーの半分は日本人の手がかかっていることも言い添えておきましょう。それにしても高層ビルが林立する華麗な世界都市に育ったクアラルンプールが、陰湿な暗殺の舞台になったのが惜しまれてなりません。
                                                                         (古川 薫)

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