トップ > 名誉館長のつぶや記 > 名誉館長のつぶや記209 明治産業革命世界遺産「松下村塾」

つぶや記 209
明治産業革命世界遺産「松下村塾」

   国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会が、山口など8県の23施設からなる「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録を決定しました。反射炉など関連施設を4つも抱える萩市にとっては、NHK大河ドラマ 『花燃ゆ』と共に、まさに盆と正月が一緒に飛び込んできたような朗報です。
   そのはしゃぎ方を見ていると、まず観光に役立つという歓びぶりが見え見えで、もうそれしかないという低俗な打算がむき出されてくると、鼻白む思いがしないでもないといえば、おめでたい話に水をさすようですが、正直な感想です。
   たしかに登録されると全国あるいは世界から人が集まってくる。その経済効果は絶大なものです。しかしそれがいつまで続くかが問題です。もしかしたら一過性のお祭り騒ぎに終わるかもしれないことを認識しておくべきです。
   先日、島根県の大田市に行って、それを実感したのです。石見銀山の世界遺産登録当時も行ったのですが、あのときの盛況がウソのように、町は静まり返っているのにはおどろいてしまいました。
   同じ世界遺産でも宮島や富士山のように、原風景として保有する自然環境は、世界遺産というカンムリを与えられることによって価値が倍加しその効果は永続します。つまり観光はリピート、もう一度でも二度でも来てみたいという魅力こそが観光資源なのです。
   銀山の遺跡などというものは、一度訪れて「なるほど」と思ったらそれで知的好奇心を満足させて帰って行くのです。こんどの産業革命の遺跡も同様でしょう。宮島や富士山とは異質の世界遺産ということを心得ず、やたらに観光産業を前面に押し立てているうちには閑古鳥が鳴くようなことにもなる。
   萩市について言えば、このたびのことで「なぜ松下村塾が産業革命の関連施設なのか」といった疑問の声があがっています。そうした問いにも答えうる受入れの準備も必要です。萩に行って歴史を学んだ、人情も風光もよい、さてもう一度と思わせる世界遺産になってもらいたい。
   なぜここが世界遺産として登録されたのか。その本来のかたちを守るべく遺跡・史跡の保存維持にいっそうの知恵を働かせることによって、一過性でない存在価値の充足が大事だと言うことは、お隣によい標本があります。
                                                                               (古川 薫)

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