トップ > 名誉館長のつぶや記 > 名誉館長のつぶや記186 赤銅御殿で見た白髪の人

つぶや記 186
  赤銅御殿で見た白髪の人

   NHKの朝ドラ『花子とアン』が好評のようです。はじめあまり興味をしめさなかったが、途中から柳原白蓮らしき人物が出てから観るようになったといえば、ヒロイン村岡花子には失礼というもの。主役を食うとはこのことです。
   とにかく50歳前後の男性、いやわたくしなんか後期高齢者も「最」の字を添える老体にしてみれば、『赤毛のアン』よりも『麗人』こそなつかしい映画で、さらにはヒロインを演じた原節子のわすれがたい面影が、白蓮と重なって浮かびあがるのです。と申しても柳原白蓮というジツブツの顔をまともに見たわけではありませんから、重なるというのはおかしいですね。もっともわたくしは白蓮夫人の後ろ姿を見たことはあるのです。
   昭和29年9月、わたくしは別府温泉行き1泊のツアーに参加、伊藤伝右衛門が白蓮のために建てた赤銅御殿(当時は人手にわたり同名のホテル)を見学しました。いうならば趣味の悪い豪華な "御殿" をひとわたり見学して、帰りがけに庭園のそばを通るとき、池のそばにしゃがんで物思いにふけっているふうの藤色の和服をきた白髪の婦人を見ました。瞬間、柳原白蓮だと直感したのですが、まさかと思い、そのまま忘れていました。
   最近、矢島嗣久という人が書いた『白蓮と伊藤伝右衛門』という文章を読んでいて、あっと声をあげてしまいました。昭和29年9月23日、白蓮(69歳)は、「ホテル赤銅御殿」にできた彼女の歌碑の除幕式に招かれて東京から訪れてきたのでした。矢島氏は「事件から三四年後に」と書いています。事件とはむろんあのことでしょう。
   わたくしが池の畔にうずくまる白髪の婦人の後ろ姿にただよう気品に打たれての直感は当たっていたのですね。歌碑に刻まれているのは次の歌です。
 
   和田津海の沖にひもゆる火の国に
                 われあり誰ぞや思はれ人は        白蓮 
                                                                             (古川 薫)

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