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つぶや記 177
おぞましい魔女狩り

   小保方晴子さんの記者会見をテレビで見て、現代の魔女狩りが行われているという戦慄を覚えました。15世紀ヨーロッパ百年戦争の末期、イギリス軍を撃退して一躍救世主となったフランス片田舎の農民の娘ジャンヌ・ダルクが、イギリスと通謀するルーアンの司教たちによって魔女に仕立てられ火刑に処せられるという悲劇は、さまざまに姿を変えながら、人間社会の宿痾として今に及んでいるのです。
   万能細胞「STAP細胞」の発見は、ノーベル賞級の朗報として難病に苦しむ世界の人々を歓喜させました。学会でみれば30歳の無名の"小娘"に脚光があたったと思う間もなく、「ねつ造された論文」の汚名をきせられて彼女が袋だたきされている図はまさに魔女狩りそのものです。
   「小保方ひとりでやったことだ」と口をぬぐう共同執筆者といわれた男たち。孤立無援の窮地に追い詰められているまだ少女の面影をやどす小保方晴子さんを理解し、「STAP細胞は存在する」と泰然自若として擁護する人物は、遠く離れたアメリカのハーバード大学の老学者だけのようです。
   大学の先生の論文が盗作、改ざんとやり玉にあげられることは、いわば日常茶飯事ですが、そのほとんどは内部告発です。言い方を変えれば互いに足の引っ張りあいをやっているわけで、裏に流れているのは競争社会によどむ「妬み」という低次元の悪意です。
   これまでの学問的常識では破天荒の「STAP細胞」の発見はたいへん結構なことではありませんか。もしそれに疑義があるとすれば、クソミソに貶すまえに、徹底検証してみるのが人間の学としての科学の在り方のはずです。発見の結果に身をゆだねようとしている人々のことを思えば、アラ探しをやっている暇はないじゃありませんか。
   世界で最初の抗生物質ペニシリンを、フレミングが青かびから発見したのは1928年のことでした。それをフローリーらが分離抽出、臨床的有効性が証明されたのは、およそ10年後のことでした。人類はこの新薬に命を救われ、いまもその恩恵に浴しているのです。
   夢のような万能細胞が存在してほしいという願望をふくめ、10年と言わずここ数年のうちに、21世紀の大発見「STAP細胞」の臨床的有効性が証明される日が来ることを信じています。
                                                                              (古川 薫)

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