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つぶや記 100
1億総ペダンティスト

   いわば自然体で、うつむき加減でやってきたつもりの「つぶや記」も100回を迎えました。新聞コラムの名手といわれた人が、「ミカン箱の上に立ったつもりで」と、書き手の立ち位置を説いていたのを記憶しています。「君らは知らないだろうから教えてあげる」といった思い上がりはいけないと教えているわけです。
   わたくしは新聞1面のコラムで「つぶや記」の勉強もさせてもらっています。新聞社きっての書き手が筆力を競う看板コラムですから、読む価値のある文章であることは間違いなく、ミカン箱の上からの定点観測を感得できる考現学的時事エッセイでもあります。知識として教えられることも多いのですが、最近各紙のコラムの調子が、古典その他の文献から言葉を引いて、ものの見方、考え方を述べるといったていの内容が多くなった気がしています。
   つまり博覧強記ぶりを競っている感じがあります。それはそれで面白く、勉強もさせられるのですが、度を超すとペダンティック(衒学)な嫌らしさに陥ってしまう。数十巻の重く分厚い百科事典を繰らなくても、このごろはインターネットという文明の利器が普及して、ヤフーだとかグーグルとかの電子エンサイクロペディアが無料で気軽に引けます。1億ペダンティスト時代の到来ですか。新聞のコラムに衒学的気配がただよいはじめたのも、どうやらそれを反映しているように思えてならないのです。他人の言葉でなく、自分の言葉で、後世のコラムニストがそれを引用したくなるような創造的文章を期待するということで、「つぶや記」子の自戒もこめて、100回の辞とします。  
                                                                          (古川 薫)

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