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つぶや記 99
  反省と非難と

   このたびの福島原発事故について、事故調査・検証委員会の報告に衝撃を味わいました。思わず怒りさえ覚えるのであり、その「報告」を伝える文言が非難調になり、その非難の矛先が関係する個人に向けられるということも、成り行きということかもしれません。
   非常事態を迎えた人為現象の最たるものとしては、例えば戦争があります。そこにはあらかじめ想定していた状況と、従来思いもつかなかった事態が渾然として現れるのであり、それへの対処の方法が、間違っていたことが後になって判明してきます。日露戦争終結後、作戦の誤りが次々と指摘されて行きます。旅順要塞攻撃だけでなく、奉天大会戦でも、作戦齟齬の責任は、大本営にも現地総司令部にもあったわけで、事後その責任を隠蔽したり、他に転嫁したりの軍人らしくない言動も見られました。
   神でない人間に完全無欠な行動を期待することはできないので、誤りは率直にみとめ、反省して未来に備えようという「検証」を試みたのが、谷寿夫中将『機密日露戦史』でした。
   これは公刊されたのではなく、士官学校の作戦教育のいわば教科書だってのです。その機密文書が第二次大戦後、公開されたのでした。NHKの大河ドラマ『坂の上の雲』の特に陸軍に関しては、この『機密日露戦史』を、資料として、しかも個人的非難の史観で書かれた小説を脚色したしろもので、史実に知識のある人々からは、不満の声もあがっています。テレビ・
ドラマのことですから、あまりメクジラ立てることもありませんが、原発事故をめぐる検証が、非難でなく反省でなければ、建設的な意味を持たないという教訓は浮かんできます。   
                                                                          (古川 薫)

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