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つぶや記73
  光陰矢のごとし

   昨年末、日めくりカレンダーをもらったので、ことしは元日いらい1日1枚、A4の大きさのコヨミをめくることを楽しむつもりでした。特大の数字のまわりに旧暦の日付、大安・仏滅など最近はカレンダーから消えた暦注六輝、「昭和以来86年」、「喜びの一日は悲しみの二日に優る」といった日々の処世訓、はたまた前月と翌月の七曜暦まで小さく刷り込んであります。結構役に立ちそうです。
   ところが旅行などして帰宅すると、生きている時間の経過を告げるように、過ぎた日付の数字がいやに大きく目に飛び込んできて、疲れを倍増させたりもします。旅行ではなく、忙しさにかまけてカレンダーをめくるのを忘れて数日を過ごすことが一再ならずあります。目を通すまでもなく、1枚ずつめくり捨てるときの気持ちは複雑で、どうかすると、無駄にした時間が紙きれとなって、はらはらと散って行く虚しさを感じることが、加齢とともに多くなります。落ち葉のように軽やかに舞いながら、チリ箱を埋める日めくりカレンダーをながめるたびに、「光陰矢のごとし」という格言を思い浮かべるのです。
   そんな日めくりカレンダーなら壁からはずしてしまえばよいではないかと思わないでもありませんが、それでは一挙に大量の時間を放棄するような気がしないでもない。
   「光陰矢のごとしとは、人類が発明した最高に残酷な言葉だ」といったのは、多分小林秀雄だったと思いますが、数日ごとにこの残酷な言葉を、日めくりカレンダーをまとめて破り捨てつつ味わっている昨今であります。                                                                                  (古川 薫)
  

 

 

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