トップ > 名誉館長のつぶや記 > 名誉館長のつぶや記42 暁に祈る

つぶや記 42
  暁に祈る

   金星探査機「あかつき」が、金星の軌道に乗れるかどうか、まさに祈るような気持ちでニュースを待ちました。壮大な宇宙ドラマは、失望落胆のうちに幕を閉じました。失意の余韻で連想したのが、軍歌『暁に祈る』であったことは、これも後期高齢者の度しがたい回顧癖であります。しかし田中絹代ぶんか館に関わる者としては、当然のことではないでしょうか。田中絹代出演作品リストのなかに、『暁に祈る』があるのですから。
   松竹映画『暁に祈る』(佐々木康監督)は、昭和15年の製作です。翌年が太平洋(大東亜)戦争勃発です。中国大陸で戦火が起きてから3年目、日本人が戦争の深みにおぼれてゆく暗い予感のただようころでした。伊藤久男が歌う軍歌『暁に祈る』が生まれたのはそんな時で、国民歌謡的に流布され、田中絹代主演の映画もそれに便乗して作られたのです。

      あゝ あの顔で あの声で 手柄たのむと妻や子が 
      ちぎれる程に振った旗 遠い雲間にまた浮かぶ
      あゝ 傷ついた この馬と 飲まず食わずの日も三日
      捧げた命 これまでと 月の光で 走り書き

   輸送船で戦地に送られた兵士の側から歌うのですが、その悲壮な曲想は、どうかすると哀調を帯びて、戦意高揚とは裏腹のものでした。
   金星探査機「あかつき」の失敗で、つい落ち込んだ連想に走りましたが、6年後もう1度チャンスがあるとかですから、その成功「祈る」ことにします。 
                                                                            (古川 薫)

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