名誉館長のつぶや記
名誉館長のつぶや記176 張り手ご用心
つぶや記 176
張り手ご用心
大相撲大阪場所で豊真将が十両優勝、来場所からまた「山口県下関市出身・・・・・・」のアナウンスが聴けるわけです。鶴竜が横綱となり、久しぶり3横綱で土俵はにぎわうことでしょうが、それにしてもモンゴル出身力士のそろい踏みとは情けないですな。ブルガリアの琴欧州が引退でも、なお外人力士が横綱・三役を占めそうな形勢です。
さて、このごろ気になっている相撲の様変わりは、「張り手」がめっぽうふえたことです。この技は四八手にふくまれており、禁じ手ではないのですが、昔から「張り手」や「猫だまし」は邪道とされていました。わたくしらが子供のころ「張り手」を得意とする力士に前田山というのがいて、みんな白眼視していました。近所の金持のご隠居さんが、ご贔屓の力士が前田山と取り組むと分かると「張り手ご用心!」と電報を打っていたのを覚えています。前田山英五郎は36代横綱ですが、印象の悪いお相撲さんでした。
少し以前、「張り手」に関わる暴力事件がありました。十両戦のことで大きく報じられなかったので、あまり知られていませんが、佐渡ヶ嶽部屋の琴冠佑が立ち合いの相手・勢(伊勢ノ海部屋)から決め手の「張り手」を食ったのを怒り、支度部屋に戻って仕返しに殴り返したのです。
この技は遺恨を残すこともあるのです。琴冠佑は引退しました。琴冠佑は40歳、勢は19歳です。勝負に年齢の上下はないといっても、そんな年下が「張り手」をつかうことなど昔はなかったのです。琴冠佑への共感なきにしもあらずでした。
このごろ横綱白鵬までが、時にそれを使います。前田山の例があるにしても横綱相撲とはいえません。「張り手」横行が外人力士進出と関係ありとは申しませんが、国技にふさわしく礼儀正しいと評判の豊真将・響灘がこれを使わないのはさすがですね。がんばれ郷土力士!
(古川 薫)