名誉館長のつぶや記
名誉館長のつぶや記105 東京の長州人
つぶや記 105
東京の長州人
こないだ上京したとき、品川弥二郎の銅像をさがして2時間ばかり、東京の街をほっつき歩きました。
品川弥二郎は吉田松陰の門下、JAの始祖ともいわれる人物です。ことしは国連がさだめた国際協同組合年にあたり、各国で関連の行事が実施されています。山口県では、弥二郎の顕彰活動が始まりました。
協同組合とは、「消費者・農民・中小企業などが、各自の生活または事業の改善のために組織する団体。消費者組合と生産者組合とに大別される。消費生活協同組合。農業協同組合・事業協同組合など」と広辞苑にあります。毛細血管のように全世界を覆っている協同組合組織は、もともとヨーロッパで発達しました。
品川弥二郎がドイツ公使のとき、これに着目して、日本への導入に努力、困難のすえ法制化にこぎつけると同時に急死しました。その品川弥二郎の銅像は、都営地下鉄九段下駅の付近、靖国通に面した小公園にありました。明治40年建立、忘れ去られているとはいえ実に堂々たる立像がそびえていました。
東京にある長州人の銅像といえば、靖国神社境内の大村益次郎は今も健在です。ほかに三鷹の井の頭公園にあった田中義一像は居心地がよくなかったとかで萩市が引取り里帰りしました。
それにもう一つ東京駅前(丸の内口)の井上勝像。これは鉄道の父とされる人(長州ファイブ)ですが、数年前から姿を消したまま、行方不明です。メディア関係者に話したのですが無視されました。去る者日々に疎し。さもあらばあれ長州人弥二郎の銅像は、がっしりと東京の土に根を張っています。
(古川 薫)