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名誉館長のつぶや記

名誉館長のつぶや記66 関門海峡発電所

つぶや記 66
  関門海峡発電所

   田中絹代をはじめ藤原義江も林芙美子も、下関で生まれた人たちは、原風景である関門海峡への郷愁を、それぞれに語っています。
   下関と関門海峡は太古から深いつながりの歴史を生きてきました。内海航路、国際航路としての機能は、現代にも引き継がれています。
   この関門海峡に新しい役目を持たせようという発想は、潮流の利用です。関門海峡の巨大な潮流の潜在エネルギーは、長い歳月にわたって放置されてきました。
   下関にきた坂本龍馬は、関門海峡を通航する仰山な船舶をみて、馬関商社の設立を思い立ちました。福島原発事故を契機に自然エネルギーによる発電に関心が集まった今、彼がいたら関門海峡水力発電所を興そうとするのではないでしょうか。
   関門海峡の潮流を利用しようとする発想そのものは、ずいぶん以前から取りざたされていましたが、当時では電力需要が切羽つまった状況になかったせいもあって夢物語りに終わっていました。
   ところが5月26日の山口新聞によると、北九州市と九州工業大学が、関門海峡での「潮流発電機」の実証実験に2011年度から取り組むとのことです。思わず快哉を叫んだのですが、「下関海峡」のほとりにいるわれわれとしては、指をくわえてそれを見ているわけにはいかないではないかとの思いもあります。
   関門海峡の流れで出来た電気が、九州をうるおすのであれば、西中国の電気をまかなう下関側にもそれができてもよいではないか。潮流のはげしい巌流島あたりに、適地がありそうです。「関門海峡巌流島発電所」というのはいかがですか。発電という新しい機能を加えた21世紀の関門海峡は、もはや夢ではなくなりました。   
                                                                            (古川 薫)