名誉館長のつぶや記

名誉館長のつぶや記169 大河ドラマに長州登場

つぶや記 169
  大河ドラマに長州登場

   再来年のNHK大河ドラマは、久坂玄瑞の妻文(ふみ)を主人公にした『花燃ゆ』に決まりました。大河ドラマについては、かねてから山口県がNHKに対して長州人を主人公にしたものをと懇願久しく、まずは高杉晋作のドラマ化を熱望していましたが、まともな晋作ドラマはなぜか敬遠され、長州人は地団駄をふんでいたのです。
まして今年は会津一色に塗りこめられ、ともすれば長州が悪役をつとめる流れでドラマが進んでいることに憤懣やるかたない思いをしてきた人たちにとって、時ならぬ朗報であることはたしかです。
   「安倍首相効果だろう」という人もいます。いつもより早い発表が、そんな勘ぐりを生むのかもしれません。わたくしなりの勘ぐりで言えば、視聴者感情のバランスをとって、こんどは長州に舞台を回したのではないかという気がしないでもありません。
まあそれにしても高杉晋作の盟友久坂玄瑞の妻とは、いささか意表を衝かれました。面白いドラマができそうです。イケメンの大男久坂玄瑞には、坊主頭の似合う海老蔵さんなんかもいいですね。
   ところで大河ドラマの舞台になった土地は、全国民の注目を浴びてにわかの観光ポイントとなり、その経済効果はばかになりません。大河ドラマへの期待はそのあたりに重心がかかっているようですが、意気消沈の地方にとっては、それも結構なことです。待望の舞台がまわってきた地元で歓声があがるのとは別に、早くも出版界の動きがはじまっています。文さんの資料はあまりありませんが、吉田松陰や久坂玄瑞については充分すぎるほどですから、歴史雑誌などの特集は、年明けから始まる黒田官兵衛と重なりあいながら本屋さんの店頭はにぎやかなことになりそうです。
   実はわたくしが昭和54年(1979)に書いた『花冠の志士―小説久坂玄瑞』(文藝春秋)は絶版になっていたのを、にわかに復刊するとの知らせがあったばかりです。何はともあれ長州の大河ドラマ登場おめでとうございます。
                                                                             (古川 薫)