名誉館長のつぶや記
名誉館長のつぶや記130 絽の衣女優魂
つぶや記 130
絽の衣女優魂
俳誌「其桃」女性句会の田中絹代ぶんか館吟行作品が寄せられました。ほぼ定期的に催されている吟行ですが、季節毎のまた来るたびの新しい発見があって、俳句の世界の奥深さを味わいました。こんどは芥川賞受賞の田中慎弥展を詠んだものもあり、多彩な内容となりました。約80句から選ばれた16句を紹介します。
絽の衣に女優魂透し見ゆ 角田節子
原稿の分厚き梅雨の重さかな 池田尚文
夏燕田中慎弥の生きる街 福嶋 泉
忘却の光陰透くる絽の被衣 川上恵子
紙魚しるき絹代の台本梅雨に泛く 坂本悦子
青水無月廊下曲れば絹代笑む 金谷初枝
短夜や原稿はみ出す赤鉛筆 前田冨美
夏館馬関の文豪そろひたる 井上灯子
梅雨蝶や川底までの錆梯子 清水 元
川沿ひの小さき菜園茄子の花 吉原正子
街路樹の茂りを来たり絹代館 村松恵美
赤い靴似合ふ絹代の七変化 河原美江
絹代館カットグラスの白涼し 田中美智子
夏燕五穀神社の芙美子の碑 松永聖子
父と観し愛染かつらや遠き夏 倉富康成
梅雨微光辿る慎弥の鉛筆字 中村石秋
この吟行句は田中絹代ぶんか館3階の休憩室に展示されています。ミニ・ギャラリーにもなりますので、その他グループの作品展示にも利用できます。 (古川 薫)