名誉館長のつぶや記
名誉館長のつぶや記98 マニフェスト
つぶや記 98
マニフェスト
先般、北九州大学の公開講座で乃木希典のことを話しに行きました。私が話している途中、真ん中あたりの席に陣取った初老のご婦人数人が、声高に私語を始めました。
しばらく経ってもやまないので、私語をやめてくださいと注意しました。座がしらけるんですね。たいていの場合、がまんするのですが、ひどい時には怒りをもって、言ってやります。
後でわかったのですが、その人たちは、わたくしが大学側の要請であらかじめ配布したレジュメの記述と、話の内容が一部違っていることを指摘して騒いでいたということでした。
大学では、学生が受講を選択する参考にシラバス(講義実施要項)を作成しますが、公開講座で配るレジュメは、シラバスなどではないので、話が脱線して横道にそれることはあり得ると、わたくしは考えているのです。それにどちらかといえば、脱線するくらいが話は面白いはずです。しかし世の中にはそんなことが許せない人もいるんですね。だからこのごろは、事前に脱線のことも予告することにしています。
さて、ところでこのごろ、ニュースで「共産党宣言」をさすものだったのを、当世では選挙で政党・候補者がかかげる具体的な公約の意味を、ハイカラな言葉でだれかが言いはじめたらしい。
公開講座のレジュメに文句をつけるほどですから、政党のマニフェスト違反は大問題でしょう。昨今はマニフェスト訂正が頻出、紛議をかもしています。これからは「変更の可能性あり」と「マニフェスト」の末尾に小さく入れておいたほうがよろしいのではありませんか。
(古川 薫)