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つぶや記 12
男のすなる映画監督

   レニ・リーフェンシュタール監督は世界最初の女優監督です。女優にして監督というのは1930年代では他に例がなかったのです。
2002年、ドイツのケルンで田中絹代の監督作品が上映されたのは、リーフェンシュタール以後、記憶されるべき女性監督のひとりという評価のあらわれでしょう。
   日本古典『土佐日記』の冒頭に「男も(の)すなる日記(にき)といふものを、女もしてみむとしてするなり」とあります。紀貫之は男ですが、女の語りにしたところに、日記を書く風習も男性社会が占有していた当時の事情がにじんでいます。田中絹代の時代も映画監督が「男のすなる」職業だということを、だれも疑いませんでした。それを絹代がやるといいだしたとき、映画界に衝撃が走り、さまざまな抵抗にも遇います。田中絹代はついに監督の座を獲得いたします。女性の社会進出がめざましいこんにちでも、なお「男のすなる」という現実が残存している限り、絹代のこの挑戦はすばらしい模範となりましょう。
   このごろ女性監督の進出が、ようやく目立ちはじめました。最近、第1回作品『カケラ』の上映で来関した安藤モモ子監督もそのひとりです。若い女性が、おそらく若い人を対称に作った映画ですが、この老齢の男にも充分な共感がもてました。わたくしの目には、若者の崩壊感覚を、必死にささえようとしている監督の姿勢が、実にさわやかでした。モモ子さんは田中絹代につづく希望の星です。応援してあげてください。
                                                                            
(古川 薫)

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