トップ > 名誉館長のつぶや記 > 名誉館長のつぶや記153 長府城下の花合戦

つぶや記 153
  長府城下の花合戦

   長府は花の町です。

かれこれ30年前の春一番が吹くころ、東京の客を案内して長府城下を散歩しているときでした。古江小路の土塀越しにのぞく濃紅色の花をひらいた緋寒桜を見て、ひどく心を打たれた様子なので苗木を送ることにしたのです。

   タイワンザクラの別名があるくらいで、南国の花ですからどうかと思いましたが、下関植木に相談すると、「東京では無理でしょうが、今ここに苗木があるので、試しに送ってあげましょう」と親切な答えでした。むろん無料で引き受けて下さったのです。

送られた下関の緋寒桜は、やはり育ちませんでした。好意に応えて、一度だけ花をつけてくれ、そのまま枯れてしまった可憐な桜のことを、古江小路を通るたびに思い出します。

   緋寒桜を追って、桜の本番ソメイヨシノの盛りとなります。長府では功山寺、また神戸製鋼所の塀沿いの桜並木が有名、ほかにこれは一般に公開しないので、めったには見られませんが、三菱重工の寮になっている「田中隆の西洋館」の庭では、樹齢300年近い桜の大樹が枝を広げています。

   次に長府庭園の前を走る桜並木は、毛利氏時代のものです。枯れたので、植え替えたのがりっぱに育ち、ことしはみごとに花をつけました。西洋館の雄大な石垣に沿う桜並木が、武家風の叙景をつくりだしています。

   忘れていました。桜の前に城下のあちこちで大ぶりの白い花を咲かせるのはハクモクレンです。本当の木蓮(木蘭とも)は薄紫のシモクレンで、ハクモクレンは木蓮の近縁種ですが、長府にはこれが多いようです。目立つ花ですね。花言葉は「自然への愛」「持続性」だそうです。

   さてハクモクレンの白は源氏の色、厚く大きな落花が終わり、やがてあざやかな赤に染めたたわわな花の風姿をまとう八重桜があらわれます。長府城下の紅白花合戦がたけなわとなったころ先帝祭が近づき、関門海峡のほとりは夏を迎えるのです。

                                                                                   (古川 )

 

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