トップ > 名誉館長のつぶや記 > 名誉館長のつぶや記83 鬱という現代病

つぶや記 83
  鬱という現代病

   下関出身・佐々部清監督の最新作『ツレがうつになりまして。』をシーモールのシアター・ゼロで観ました。
   「うつ」とは鬱病のことです。世情にうといわたくしとしては、「へー、そんなものが映画になるのかいな」くらいの気持ちで、劇場にでかたのですが、ちょっと衝撃を受けてしまいました。友人にそのことを話すと、認識不足を笑いながら「このごろ若い娘さんたちのあいだでは、鬱は一種のファッションで、それにかからないのは鈍感の証拠と思われているらしいよ」などという。
   誇張しているのでしょうが、ややそれに近い状況にあるようです。なにかとストレスの多い昨今のことですから、日常的に心の病いに襲われる人々がふえていることはたしかです。アメリカあたりでシック・マインドという言葉が流行したのは、数十年前のことだったと記憶しています。精神病というほどではなく軽い心の病いという理解でシック・マインドと鬱病を同義語と心得ていたのですが、このごろいわれる「うつ」は、かなり深刻な病理性を帯びているらしい。
   例によって広辞苑を引いてみました。その第1版には「深刻な悲しみの気分におちいる精神の病気。初老年期などに多く見られる」とごく簡単な説明がしてあります。初老年期に多く見られるとは恐れ入りました。さて第6版になりますと次のように懇切丁寧となります。「気分障害の一型。抑鬱気分・悲哀・絶望感・不安・焦燥・苦悶感などがあり、体調がすぐれず、精神活動が抑制され、しばしば自殺企図・心気妄想を抱くなどの症状を呈する精神の病気。原因不明。長いので以下省略)
   自殺企図など、映画ではここにあるそのままの症状に襲われる若いサラリーマンの姿が描き出されます。静寂な空気の中で進行するサスペンス・ドラマもどきの映画を、佐々部さんは作ってくれました。鬱病は風邪をひくように、安易にかかる精神病、原因不明、正体不明のウィールスのように忍びよってくるそうです。ご注意を。
                                                                    (古川 薫)

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