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つぶや記 76
  文は人なり

   田中絹代は小学校も卒業していませんが、成人してからの文章は、エッセイや手紙などなかなかのものです。この夏、子ども作文教室というのを、昨年にひきつづき田中絹代ぶんか館でやりました。小学5・6年生を対象としたものです。
   電子時代の昨今ですが、文章をつづる記述活動と無縁の生活はありえないわけで、小学生時代から文章力をつけておくことが大事だと、親から命じられてきた子もいるようでした。私語したりふざけたりの男の子がそうなのでしょう。
   1時間ばかり話してから、文章を書いてもらいました。一応の題は与えてありますが、いきなりでは何をどう書いてよいか分からないではないかとの批判もあるでしょうが、まず各人がどのくらいの文章力を持っているかを把握するためです。一部の例外をのぞいて、どの子どももしっかりとした字で原稿用紙の升目を埋め、600字前後の文章を、起承転結を整えて書いているのです。さらに意外だったのは、ふざけたりして行儀のわるい例の男の子が、短い時間に400字ばかりの文章を文脈に乱れもなく書いているのです。そういうタイプの秀才型がいるんですね。しかし文章は卒なく書いているが、残念ながら情感がない。「花火を見に行きました」というのに、夜空を彩る花火の美しさ、おどろきがつづられてない。つまりマニュアル型の文章です。これから表現指導が始まるのですが、技法にとらわれるとそれ自体がマニュアルになって、文章に魂が入らない。三島由紀夫なども『文章作法』といったものを書いていますが、文章をこう書けといったことにはあまり触れていないのですね。要するに極意は文章以前の精神のあり方なのでしょう。「文は人なり」です。文章は習うのではなく、考えて創るものですね。この講座では、もっぱらお話に力をいれました。 
                                                                        (古川 薫)

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