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つぶや記 268
  蟹爪と破砕の光

  戦争中・・・・・・とわたくしたちは簡単に言いますが、第二次世界大戦のことです。京都で元貴族の紳士が、「この前の戦争では、散々な目に遇いました」と言ったときは応仁の乱をさしていますのでご注意を。
  甲子園でスタルヒン(1916-1957)が投げるのを見たという話が通ずる老人も少なくなりました。スタルヒンは、ロシア生まれ、北海道で育つ。1936年プロ野球読売巨人軍に入団、戦争中は須田博と改名、わたくしが見たときの彼は戦闘帽をかぶって投げていました。初の通算300勝、野球殿堂入りの名選手です。
  敵性語を嫌う政府の方針で、そのころ野球用語はすべて日本語でした。バットのことは「打棒」、ストライクは「正球」または「よし」、ボールは「悪球」、セーフは「安全」といった調子です。
  英語が多用されるのは機械工学用語も同様で、わたくしがいた海軍管理の飛行機工場の工具類の中では「蟹爪」というものがありました。スパナのことです。これなどは諧謔だけでなく、その工具を写生した巧みな命名として日本語言い換えの傑作というべきでしょう。
  今となって、そんな昔話を思い出したのは、耐震構造に欠ける建物を壊し、建てかえる工事が最近わたくしの身辺であり、それを見物しているうちに以前見た映画『ネバーエンディング・ストーリー』の壮絶な場面を思い出したからです。
  ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』が原作のファンタジー映画です。哲学的には『無』を主題とし、強大な世界の崩壊、破壊はとどまることを知らず、すべてを飲み込んで行くという物語です。
  耐震構造の建て替え工事は3階、5階のビルを油圧ショベル(ユンボ)という建設機械で破壊するのですが、怪獣が大あばれする光景を思わせます。この場合機械の腕の先に取り着けるアタッチメントは破砕機といいます。巨大な蟹の爪に見えますが、ジョー(顎)というのだそうです。建物の壁に食いつき、捩じ上げて壊してゆく最高40トンの建設機械です。
  怪獣映画のゴジラが、都市を破壊する光景も連想させ、しばらくは轟音と破壊、崩壊の非情な"現代"と付き合うことになりそうです。 
                                                                                (古川 薫)

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