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つぶや記 267
  ビーカーの中

  ビーカー(化学実験に用いる円筒形のガラス器)に水をはってガス・コンロにかけ、水中にカエルを一匹放して点火する。始めのうちカエル君は心地よさそうに泳ぎまわっているが、ビーカーの中の水の温度が沸点に達すると同時に、腹を返してしまう・・・・・・。残酷な実験ですが、人類への貴重な警告です。
  もともと茹(ゆ)でガエル現象・茹でガエルの法則を、ビジネス現象の変化に対応する人事現象を寓話として最初に用いたのは、アメリカの思想家・文化人類学者・精神医学者グレゴリー・ベイトソン(1904-1980)で、「ベイトソンの茹でガエル寓話」として知られています。
  熱湯の中にいきなりカエルを入れるとおどろいて飛び出すが、常温の水にいれて徐々に加熱すると、カエルは温度変化に慣れて、生命の危機に気付かず茹であがってしまう。ゆっくり進行する危機や環境変化に対応することの大切さ難しさを戒める寓話です。
  茹でガエルの法則はビジネスから、放射能に移ったりしましたが、このごろの北朝鮮弾道ミサイル問題に話を移していくことができると思うのです。
  北朝鮮の弾道ミサイル打ち上げ実験は、これまで秘密裡にやっていたのが、最近では動画付きで大っぴらに打ち上げて見せ「アメリカ本土にも届くぞ、ワシントンも射程に入っているぞ、日本はわれわれの掌の中だぞ」などと恫喝するようになりました。
  世が世なら互いに宣戦布告を発する危機的状況です。「我慢にも限界がある」と応酬していたトランプ大統領も手を振りあげるばかりなので、最悪の状態を恐れた人も安堵したのですが、それで安心というわけにもいきません。アメリカあたりでは、日本人などよくもまあ平気でいられるものだと話題になっているといったことを、テレビの海外ニュースでみました。
  北朝鮮にしろアメリカにろ、戦争になったらお互いに大変な被害を出すことが分かっているから、戦争にはなるまいと考えている人々も多いようです。わたくしなんかもその口で、平和ボケしているうちに自分がビーカーの中の茹でガエルになっているかもしれないという不安が、チラリと頭をかすめることもないわけではありません。自分が知らぬうちの環境変化とは実に怖ろしいものであります。
                                                                                (古川 薫)

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