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つぶや記 246
  維新150年モニュメント

   新しく開館した下関市立歴史博物館の玄関を飾るブロンズの群像は、文化集団「志士の杜」が維新150年を記念して下関市に寄贈したすばらしいモニュメントです。
   彫刻家田村務氏(梅光学院大学特任教授)の傑作で、同氏みずからの命名による「時代(とき)を拓(ひら)く」という題も輝きを添えています。はからずもわたくしは題簽(だいせん)の揮毫を頼まれる光栄に浴しました。
   わたくしは以前、大内時代山口に入国したフランシスコ・ザビエルの取材で渡欧したおり、リスボンの港で「エンリケ航海王子」を舳先に置いた石像のモニュメントを見たことがあります。十六世紀大航海時代を先駆けた人々の一斉に前のめりとなって未来をめざす石像群の印象が脳裏に焼き付いています。
   奇しくもこのたび田村先生の『時代を拓く』の群像が、同じような姿勢をとっているのがとてもうれしいことでした。それにもうひとつ、ロンドンのヴィクトリア・タワー・ガーデンで見たオーギュスト・ロダンの『カレーの市民』を思い起こしました。英仏100年戦争のとき、英軍に包囲されたカレー市の市民6人が死刑を覚悟で郷土を護った故事に基づく作品です。
   このたび田村先生の手で、幕末のわたくしたちの郷土長府に関わる志士の群像が出来上がりました。それはあたかも立ちあがったカレー市民を思わせる感動的な彫刻です。
   ロダンはこの像を平地に設置するように指定していました。ロンドンで見た『カレーの市民』は作者の指定通り、広々と傾斜した芝生の中央に置かれていました。
   東京の国立西洋美術館にもロダンの『カレーの市民』があります。作者の指定で12体しか鋳造されなかった貴重な美術品です。ところが日本ではロダンの指定に背いて、高い台座を作り、前庭の隅っこに据えてあるのはどうしたことでしょうか。
   『時代を拓く』は、台座を置かず、大地に足をつけています。しかもガラス張りの「光庭」に据えられた漆黒の群れがなんとも美しい。命をかけて祖国を護ろうとする前傾姿勢が、平和の夜明けを引き寄せる秀逸な構図です。下関市民の誇るべき明治維新のモニュメントの完成をお喜び申し上げます。
                                                                               (古川 薫)

下関市文化振興財団
下関市近代先人顕彰館 田中絹代ぶんか館

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