トップ > 名誉館長のつぶや記 > 名誉館長のつぶや記236

つぶや記 236
  木口小兵衛のラッパ

  スニーカーという履物はじつに快適です。靴が軽く足を運んでくれる感じで、散歩のときとか少し歩きの多い旅行には履いて行くことにしています。ただかすかに用心しないとひどい目にあうぞという警戒心は持っていました。
  つまり靴底の摩擦係数が高すぎる種類のものがあって、まるで吸着盤が付いているように、どうかするとあるきにくさを感じてしまうのです。
  例えば「回れ右」をするとき、足がもつれる危険があります。やはり革底のように少し「滑り」の機能があるのが、安全ではないかと考えたりして、注意していたのですが、先日津和野町の路上で、恐れていた通りの失敗をやらかしてしまいました。
  歩きながら右手にカメラを持ち、町の風景を撮っていました。フィルムのころは、やたらにシャッターを切りませんが、デジタルとなると気軽にバシャ、バシャと撮りまくるのが素人の浅ましさです。
  昭和初年の雑貨屋を閉店したまま、化石のように塵をかぶっている店の前を通りすぎ、思いついて振り返りざまシャッターを切ったとたんに足がもつれ、どっと横倒しに転倒しました。
  持っていたカメラを庇うため、倒れる瞬間、手で体を支える受け身の型を省き、体重をもろにかけて倒れたので右肩を強打、上腕骨の複雑骨折という重傷を負いました。
  日曜日で病院には内科医がひとりだけ、タクシーも動くのが2台、やっと1台を確保して下関に帰り、関門医療センターで3時間余りの手術をうけました。
  老化現象の特徴は「落とす・つまずく・転ぶ」です。落とすのは指のファジー機能の退化で、大怪我にはなりませんが、あとの2つは死につながる失敗です。病院のリハビリ室に行くと、転んで手足を骨折した老人の多いこと。
  負傷の経緯を説明したら、ある人いわく「木口小兵衛(小平?)は死んでもラッパを口からはなしませんでした。あれですな」と笑いました。日露戦争の話が載っている教科書を思い出すなんて、この人、そうとうなご老人ですな。わたくしの場合は、死んでも安カメラを手から放しませんでした。老人同士そんな笑い話ができるだけ不幸中の幸いということでしょうか。ともあれ皆さんくれぐれもご注意を。
                                                                                 (古川 薫)

下関市文化振興財団
下関市近代先人顕彰館 田中絹代ぶんか館

下関市立近代先人顕彰館
田中絹代ぶんか館

指定管理者:
公益財団法人 下関市文化振興財団
〒750-0008
山口県下関市田中町5番7号
TEL 083-250-7666
FAX 083-231-0469

年間スケジュール ふるさと文学館収蔵品一覧 建物3D お客様の声 過去の講座資料