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つぶや記 229
面白いドラマの裏で

   NHKの朝ドラ『あさが来た』は熱中して楽しんでいるうちに終わりました。いろいろなことを連想させる近代史話でもありました。
   まず五代友厚が出てきます。初名は才助、高杉晋作が上海に行ったとき、彼も薩摩藩士としてやってきていました。
   高杉は維新の夜明け前に亡くなりましたが、五代は友厚と改名、大阪に出て活躍し造船・紡績・鉱山・製銅などを創業、大阪商法(工)会議所の創立などわが国資本主義経済草創期の主要人物のひとりとして大きな足跡を遺しました。
   ちなみに大阪商法会議所第2代会頭は長州人の藤田伝三郎です。間をおいて16代会頭は杉道助、この人は吉田松陰の兄民治の孫にあたる長州人です。
   『あさが来た』のヒロイン広岡浅子は五代の協力で実業界に進出、女傑としても知られ、日本女子大学の学祖成瀬仁蔵(山口の人です)と共に教育功労者としても忘れられない人物となりました。
   その活躍ぶりは痛快で、サクセス・ストーリーとしても秀逸のテレビ・ドラマでした。この物語は日本資本主義草創期の様相を面白く感動的に描いていますが、その裏にあって涙を流した人々がいることを連想させました。
   たとえば炭坑です。そこで働いた坑夫たちの奴隷にも似た生活は、筑豊炭田の坑夫の実態を描き世界記憶遺産に登録された山本作兵衛の絵が実証しています。紡績の「女工哀史」も悲惨な記憶です。維新後の日本経済発展の礎になった人々がいたことから目をそらせません。
   それからわたくしが連想したのは、三菱財閥を相手にした吉田松陰門下品川弥二郎の孤独な戦いです。
   西南戦争後、わが国が保有する汽船帆船70隻のうち56隻を所有する三菱会社が海上運輸業を独占しました。同社は為替事業を始め、さらに海上保険、倉庫、銀行、問屋などに進出、このため地方都市の問屋、運輸業者は事業を奪われて倒産する者が続出しました。この独占に当然批判が高まったのですが、政府部内での動きがなかったのは、大物政治家が三菱会社を支持していたからでした。
   そこで品川弥二郎は、民間資本を募って共同運輸会社を興し、岩崎弥太郎を総帥とする三菱との対決となるのですが、相手の強大な資本力に圧倒され敗北します。資本主義草創期、こうした葛藤もあったことを連想しながら朝ドラを楽しみました。
                                                                               (古川 薫)

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