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つぶや記 224
  年賀状

   歳末、送られてくる「喪中欠礼」の数が年ごとに増えるのは、自分が加齢をかさねている証拠なのでしょうが、同時に「生き残ったなあ」という感慨にひたることもあるのです。
   ところで2月の声を聞くころになっても、年賀状が舞い込んでくるのには、失礼ながら苦笑させられます。ちょっとお世話になったので、年賀状を出しておいたのですが、なにかの理由で受け取るのが遅れたらしく、ひどく恐縮した調子の文言を書き入れた時期外れの年賀状を受け取って面食らうことがあります。
   もう来年は書かないことにしますが、こんどはこっちの番で、お詫びを一筆添えた返事の賀状を出すことになるのかもしれません。とかく年賀状はそんな行き違いがあって、なかなか面倒な新年の文通儀礼ですが、疎遠になっている旧知とのやりとりは楽しいので、年末忙しい中でせっせと書くことにしています。
   死者から年賀状をもらったことがあります。新年早々、その人の奥さんからのハガキに、「実は年末、主人が年賀状を書き上げて、投函したあと急死いたしました。年頭、不吉な思いをなさることでしょうが、どうぞお許しを」とあるのを、絶句して読んだ20年ばかり前のことが忘れられません。
   この正月「年賀状はもうお出ししませんから、あなたさまも書かないで下さいませ」という年賀状が1枚ありました。なんだか絶交状をもらったようで憮然としていたら、年明け早々その人が亡くなったと知って言葉を失いました。
   このごろは「終活」というのだそうですが、そんな"絶交年賀状"などを配って、死ぬ準備をするのが今どきの流儀ですかね。わたくしは、もうしばらく生きて仕事がしたい旨を添え書きしましたが、これも終活の部類に入りますか。
   「つぶや記」はこれが書き初めであります。また埒もないことをつぶやきます。よろしくお願い申し上げます。
                                                                               (古川 薫)

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