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つぶや記 223
  「北越雪譜」「東北遊日記」

  この正月、東北に雪を見に行きました。そんなことを言うと、顔をしかめる人がいるかもしれません。特に北国に住んでいる人々からは、「雪を見に来るなど許せない」と怒鳴られることも知った上での雪見旅行でした。
  自分の家が雪に埋もれている銀世界の光景は、現実に見たこともないし、夢に現れたのは初めてのことです。目覚めるや東北旅行を思い立ちました。「生きているうちに」という切羽迫った衝動でした。90歳を過ぎてから、時々そんな考えがひらめきます。
  「(雪を)画に写し詞につらねて称翫するは和漢古今通例なれども、これ雪の浅き国の楽しみ也」(鈴木牧之『北越雪譜』)
  わたくしのような思いを抱いて「雪を見に来る」者を北国の人は寛大に迎えてくれるだろうという甘えた気持ちも手伝い、まったく手探りで交通機関を選びながらの旅です。
  年末年始の里帰り大移動とは上り下りの流れが逆だったので、さほど困難な旅程ではありませんでしたが、まずアテがはずれたのは、暖冬のため行くところどこにも雪が降っていないのです。
  ついに秋田県に入っても雪の気配がなく、やっと田沢湖までやってきて雪を見ました。しかし、2、3日前の雪が道端に残っているようなことで、空は晴れ、太陽が燦々と輝く「みちのく」を歩きながら、何のために遠くまでやってきたのだと無計画な衝動の旅を悔やんだものでした。
  ところが、田沢湖畔の宿で二泊目の夜からにわかの吹雪となり、翌朝は牡丹雪で、あたりはすっぽり雪に覆われてしまいました。老い先みじかい旅人を憐れんで、雪の精が恵んでくれた雪景色だったのでしょう。
  「大雪道をふさぎ、未だ行きし跡あらず、みだりに行くべからず・・・・・・」吉田松陰『東北遊日記』の旅情を追体験する新春の旅でした。
                                                                                  (古川 薫)

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