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つぶや記 210
  正午位置・GPS情報

   もう半世紀前のことになりますが、わたくしは北アフリカのヴィラシスネロス港から東京湾まで日本の鮮魚運搬船(980トン)に便乗して帰国したことがあります。地中海―スエズ運河―インド洋―マラッカ海峡など伝う40日の航海です。
   速力最高12ノットの老朽船での旅のスリルは、このごろの豪華巨船で世界一周クルーズといった船旅では味わうべくもないでしょう。
  この船旅でまず気づいたのは毎日正午近くなると、一等航海士が見たことのない測量器械を持って甲板にあらわれ、太陽にむけて観測をはじめるのです。
   それが六分儀であること、水平線から天体までの垂直角度を観測して船位を測定する作業でした。航海日誌にはその日の正午位置(アット・ヌーン)を記載することが義務づけられているのです。
  そんなことをいろいろ勉強しました。人間が六分儀の原理を発見したのは15世紀で、ウズベキスタン共和国の遺跡ウルグベク天文台に六分儀の原型が見られるそうです。
   「マリン・クロノメターという時計式の観測器があるのだが高価だから本船にはない。観測用の備品は古典的な六分儀だけ」ということも教えてくれました。しかしその後、宇宙衛星によるGPS(Global Positioning System)という便利なものが登場しました。「全地球測位システム」というハイテク機器です。
  車に低価格で備えることのできる「カー・ナビゲーション」などにも、このGPS機能が付いています。携帯用のもあって、たとえば下関市長府のわたくしの現住所が北緯33度59分22秒、東経130度59分15秒で、標高65メートルであることは一発で分かります。
   もう厄介な六分儀など使う必要はなくなったわけですが、船の備品として六分儀は欠かせないものになっているのは、電源が絶たれるようなことが絶対にないとは限らないからです。
   カー・ナビのGPSにおどろくなどは時代おくれで、今ではスマホとかという多機能の送受信機器によるあらゆる種類のGPSがあり、追跡用のものもあるそうです。電話番号を押すとたちまち地図とその位置が画像になって表れる。無人飛行機から、ピン・ポイントで爆撃もできるというのですから、「文明の利器」とは言うもおろか、恐ろしい時代になりました。
                                                                               (古川 薫)

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