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つぶや記 206
費人費紙

  毎日配られてくる新聞に、折込広告という紙が挟んであります。ときには20枚にもおよぶことがあります。上質の紙に消費物資の宣伝をカラフルに印刷した折込広告は、年ごとに派手さを増してきているようです。
  このごろは電子書籍の普及で、紙に刷った本が次第に少なくなっているといっても読書界の主流は書籍ですから、あの大量の紙を本にしたらどうなるかといったことを考えてしまいます。
  わたくしが暮らしている周辺地域に5万部の日刊新聞が配達されているとします。平均5枚として毎日5万枚、月に150万枚、年間約1億5千万枚の印刷物が撒かれていることになります。
  大ざっぱに計算して、これをB6、200ページの書籍にすればおよそ100万部となります。書籍と商品広告をくらべて、書籍の存在価値が高いと即断することはできないにしても、チラシは文字通りの消耗品ですから、すぐに紙屑となって捨てられる運命を背負っています。
  チラシ広告の紙で私製の封筒をつくり、それで通信してくる人を見かけます。おそらくは膨大な紙の消費にたいする抵抗をささやかに表現しているのだろうと思われます。しかし裏白のチラシは少なく、たいていは両面に刷ってあるので再利用もむつかしいのです。
  紙の大量消費は宣伝チラシに限ったことではありません。新聞・雑誌など併せると紙の消費は天文学的数字にのぼるわけで、パピルス時代から現代にいたる文明の発展はかくの如しということになります。
 IMG_8449'.jpgここに中国明の時代に使われたらしい雅印があります。「費人費紙」と彫られています。そこでまず「費紙」とは何か。文人や書家は、たくさんの紙を消費することによって、より高次な領域に達するという意味にとれます。時代が古くなるほど紙は貴重で高価な文房具です。相手に返事を要求するとき「裏紙にてもよろしく候」と書いた書簡なども遺っています。といって紙をけちるようではいけないといった戒めともとれます。
  では「費人」とは何か。これは医学のことだそうです。つまり医師は誤診して、たくさんの患者を殺すこと、つまり費人によって名医になるとは、一面の真理ではありますが、恐ろしいことを言ったものです。
  最近、どこかの大学病院で、同じ医師の手で10人近い患者が死んだらしいと聞いたとき、「費人費紙」のことを思いだし、ぞっと背筋が寒くなりましたが、これなどは埒外の話というほかはありません。
                                                                            (古川 薫)

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