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つぶや記 200
  つれづれなるままに

   田中絹代ぶんか館のコラム「つぶや記」が今回で200回となりました。はじめは週1でしたが、時間的な余裕がほしくて途中から2週間に1回にしてもらいました。
   たまには「下関長府庭園の孫文蓮のことを書いてあったが、あれは正統の孫文蓮ではないのではないか」というメールが東京の人から館に送られてきたりしますが、このコラム、どの範囲でどのくらいの人が読んでくれているのか、確認しないことにしています。
   わたくしはむかし山口新聞が「夕刊みなと」の題号で出ているころのコラム「みなと手帳」を連日1500回超書いたことがあります。当時中央紙の著名なコラムニストが「ミカン箱の上に立ったくらいの気持ちで書く」と言っているのを知って、自分はレンガの上で書こうと決めました。
   新聞や雑誌など活字媒体でなく、相手が目に見えぬ得体のしれない電子のメディアとなると、かなり勝手が違ってきます。しかしコラムの目線は水平がよい。小津安二郎ばりに座敷に坐った目の高さでということなら「炉辺談話」といったスタンスではどうでしょう。
   原則として政治がらみ、「天下国家」を論ずること、インターネットによる博覧強記をひけらかす衒学者(ペダンティスト)― これはコラムニストの宿命なのですが ― になること、批評がましく悪口を言うこと、小言幸兵衛になること、それらを自戒する姿勢は「みなと手帳」いらい一貫して保ってきたつもりです。
   つとめて身辺に話題をとり、著名人の言葉を引用して自分の意見を述べる常套の筆法を避け、あくまでも自分の知識を拡大した連想を土台に、使命感などではなく、つれづれなるままに、1回1回を楽しみながら書いてきました。
   まあ以上は「つぶや記」上のタテマエというもので、そんな枠をはめることもないではないかと囁く声に内耳をくすぐられたりもしています。
   たとえば昨夜の深夜テレビで、舞台で若い娘さん数人がマイク片手に歌ったり跳びはねているのに合わせて、数千人か数万の若者が集団催眠にかかったように絶叫している異様な光景をみました。
   かと思うと別のチャンネルで、歯止めのない集団的自衛権行使で日本は戦争に巻き込まれて行くのではないかといったことを、おじさまたちが討論しているのも70年間戦争のない平和がつづいたこんにちの風景です。「太平久しかるべし。ああ悲しいかな」という松陰先生の「つぶやき」にかさねて、大いにぼやく「つぶや記」もあってもよいか。これ200回のつぶやきであります。
                                                                              (古川 薫)

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