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つぶや記 198
わが望郷の福浦港

  下関出身の大女優・木暮実千代さんが彦島で生まれたことはよく知られていますが、その生家がどこにあるのか、まだ行ったこともないという人が多いのではありませんか。
  このほど「女優 木暮実千代生誕地碑」の除幕式に出席し、初めて生家の跡に立ちました。福浦港に近く、金毘羅神社が鎮座する小高い山のふもとがそうでした。
  「あれ、ここには一度きたことがある」と、ずっと以前、現在の山口新聞(夕刊みなと)文化欄映画担当記者だったころ、福浦港で火野葦平原作『花と龍』の撮影があり、その取材にきたのを思い出しました。
  北九州の若松港から彦島に筑豊の石炭を運んでくる勇み肌の男たちの話で、主演は藤田進、助演山根寿子だったのを覚えています。ある記者が「これはどういう場面ですか」と、撮影の合間に訊ねたのです。
 「君、新聞記者だろう。原作も読まずに取材にきたのか」
と、藤田進に叱りつけられる一幕もありました。念のため申しておきますが、叱られたのはわたくしではありません。さすが天才柔道家・姿三四郎で名を売った豪傑風の藤田進らしいエピソードを遺して行きました。このごろ記者を叱りつける役者さんっていますかね。
  さて木暮さんの話に戻します。昭和30年代だったと記憶しますが、NHKテレビで「私の秘密」というクイズ番組があり、下関市での録画に木暮実千代が出るという。こんなことがめずらしいころですから、下関市民はテレビにかじりついたのです。
「木暮さんのご出身は下関でしたね」というアナウンサーの問いかけに、「いいえ、私は東京です」と彼女が答えたので、みんな唖然としました。『木石』いらいの木暮実千代ファンだったわたくしは、怒り心頭に発し、しばらく木暮批判をやっていたのですが、その後、「和田家は幕臣だった曾祖父いらい江戸の人間という意識が頭にこびりついているので、とっさに口をついて出たのだろう」と、なだめられ悪口はあまり言わないようにしていたのですが、こんど生誕地碑除幕式に出席、甥にあたる黒川鐘信さんから「実千代は撮影で行ったリオデジャネーロより、私のふるさと福浦のほうが美しいと死ぬまで言い続けた」ということを聞いて、わたくしはすっかり心を改めました。木暮実千代さんは、やはり下関の人です!
  福浦の対岸は小倉です。すばらしい100万都市の夜景が見られます。関門海峡を渡って南下するヒヨドリの大群をながめられるのも福浦です。大女優が巣立ったヒコットランドのフクウラは関門海峡の美しい隠れ里です。未見の方はぜひ足をはこんでください。
                                                                                   (古川 薫)

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